nejimaki-cafe’s diary

健やかで楽しい毎日*

「密やかな結晶」 小川洋子 著

 

「喪失」がテーマの物語です。

 

主人公の「わたし」が住む島からは、

ひとつずつ、いろんなものが「喪失」してゆく。

それはある朝突然訪れます。

鳥が消え、薔薇が消え、カレンダーが消え、そして・・・。

数々の喪失。

その果て。

喪失、というより、破滅がテーマの作品のような気がしました、

読んでて。

乾いた孤独や、失うものへの静かな悲しみ。

 

小川洋子さんは、数学的なものの考え方をする人だなぁ、

と思います。

博士の愛した数式」の先入観念があるから、

だけじゃなくて。

文学を数学的に書き綴る人だなぁ、と。

なんていうのかな、

作品の中で「分析」してる・・・みたいな。

主人公は一人称で話を進めているのだけど、

主人公が自分の感情を分析してるような

書き方をする人だなぁ、って。

感情的な文章を書かないんですね。

主人公が感情的になってても文章はおとなしい

ままなんです。

淡々とストーリーが進められてゆく。

そこが小川洋子作品の魅力だと思います。

もっと上手く表現出来たら良いのだけど。

 

少し前までは感情を直球にしてぶつかってくる

作品が好きだったので、

小川洋子さんの作品は

いつもなんだか特別で、この作品は特に特別でした。

 

因みにこの話、「深い」です。

内容は省略しますが、「わたし」は小説家で、

作品の中に「わたし」の書く小説が所々出てきます。

作品と小説が、妙なバランスで繋がっていると解釈したのは

わたしだけでしょうか。

たぶん、深い部分で繋がっていて、何かを表現していると

思うのですが。

個人的に、この作品は傑作だと思います。

発想がすごいと思うし、構成も素晴らしいです。

「喪失」したものや、その感覚を表現してる文章

なんかはとてもリアルで、改めて力量のある作家さん

なのだ、と実感しました。

けど、個人的にこの作品はあまり好きではないかも。

乾き過ぎててもの足りなかった・・・、というのがたぶん

その理由です。

無機質な感じの作品が好きな方は一度読んでみてください。